「何?考え事するほど余裕なんだ。っていうか、良いの?そんなに遠くで守ってて」


「え……?」


俺が構えてから、ものの数秒の出来事だった。


そう言った皇律子の手からは、もうボールは無くて。


女では殆ど見れないワンハンドでのシュートは、体育で相手したバスケ部の連中よりも……いや、それどころか今まで見てきた同世代のプレイヤーよりもずっとずっと伸びやかで、美しかった。


皇律子がドヤ顔で指を差した先はゴールリング。


そちらを振り返れば、まるで、磁石同士が吸い付くかのように、ボールがゴールリングを潜った。


「……ねぇ思わない?私、多分男子になってもバスケで通用するってさ」


悔しいけど、言った通りだと思う。


あんな綺麗なフォームで素早くシュート、しかも3ポイントのラインから打てる奴なんて、男でも強豪校にだっているかいないかだろう。


強者を目の当たりにして、ゾク、と背筋に電流が走った。


こいつ、めちゃくちゃ上手い。上手いだけじゃない。相当戦い慣れている。