そんなこんなで、何故か俺と皇律子は駅の高架下にあるストリートのバスケットコートにいる。男子の憧れ皇律子と二人きりなのに、何も嬉しくない状況。


「ルールは3ゴール先取。君が負けたらそのまま帰って良いよ」


「はぁ?普通逆じゃね?俺が負けたら条件呑む、みたいな」


「普通はね。でも、私より弱いプレイヤーに用はないもん」



こいつの言ってることはハチャメチャだ。ってかそれって、俺、勝ったらダメなやつじゃん。


自分のプライドと今の生活の保持……冷静になれ。天秤に掛けるモンでもないだろ、どっちが大事かなんて。


こいつは俺を自分のチームに入れたいと言った。バイトと勉強漬けの生活にバスケの掛け持ちなんて、出来たら初めからしてるし。


「先攻貰っていいでしょ?女だから、ハンディ欲しいし」


その辺に転がっていた誰かのボールを拾い、軽快にドリブルをする皇律子は有無を言わさない。


「別にいーけど」


体勢を低くしてディフェンスの構えをしつつ、手を抜いているのがバレないように負けるには、どうしたら良いのか頭の中で考えた。