「あ、いや、なんでも無い。」


男は乗って、と促した。


「あのー。」


私は、恐る恐る聞いてみた。


「どこに行くんですか?」

「ん?あ、自己紹介がまだだったね。僕


は黒崎洸(くろさき こう)だ。」


と、黒崎は名乗った。


「はぁ.....。黒崎さん、ですか。」


信号が変わり、車は十字路で止まった。


気がつくと、随分遠い所まで来ていた。


「さて、ここからが本番。君にはかなり


辛い話になるだろうが、聞いて貰わない


といけない。」


急に黒崎は改まった感じになった。


わたしは、思わず身構えた。


「今僕達は、病院に向かっている。」


「はぁ。」


話の全貌が見えてこない。


だから、どうしたと言うのだろうか。


「実は、君のご両親が事故を起こしてね


。相手は即死。.....ご両親は、危険な状

態だ。」


「え。」


耳を疑った。両親が事故を起こし、相手


が即死。なんて、そうそう聞くような話


じゃない。


「な、なんで.......?は、母も父も事故を


起こした事なんて無いし、確か、免許は.


........。」


「そう。ゴールドだ。」


「なのに、なんで?!」


訳も分からず、思わず叫んでしまった。


「そうだね。ここから先は、君にとって


重く、苦しい話になる。できれば、聞か


せたく無いんだが.........。それでも、聞


くかい?」


その言葉は、私の心にズシンと重くのし


かかった。


テレビのニュースとかで見る、事故の話


なんて私には、無縁だったから。