偶然は、必然との重なり合いで出来てい
ると、誰かが言っていた気がする。けれ
ど、私はそうは思わない。偶然を実際に
体験する私には、偶然は唯の偶然でしか
ないのだ。
そんな偶然が起こったのは、ある日の事
だった。私は、友達と一緒にお弁当を食
べていた。
「真島‼︎」
勢いよく扉が開け放たれ、担任の田中先
生が入って来た。田中先生は、新任の英
語教師で、学校内でもかっこいいほうだ。
当然、女子からの人気も高い。
だから今も、先生が入って来た途端に女
子の黄色い声があちこちから聞こえてくる。
正直、私は苦手なタイプだ。
先生は、少しだけウェーブのかかった茶
髪を振り乱しながら息を切らしている。
「真島、落ち着いて聞け。今、警察から
連絡があった。」