視線を落として、ただ突っ立ているオレに、藍が飽きもせずにまた水面を蹴っては、オレに水を浴びせる。








「ソレ、優貴の前で言ったら口聞いてもらえなくなるよ。 『お母さん、誰かを恨む様な人じゃない!!』って。 ワタシもそう思う。 誰かを恨みながら子育てしていたのなら、優貴があんなに良い子に育つワケがない。 ・・・・・・・・・・まぁ、若干・・・・・・・てか、カナリ生意気ではあるけどね」







『大貴も川に入ろうよ』藍が、顔を顰めて俯くオレの腕を引いた。








その藍の手を持ち替えて、逆に自分の方に藍を引き寄せて抱きしめた。








「・・・・・・・・・・・恨まれてた方が気が楽なんだよ。 オレだけがこんなに幸せなんて、優子に申し訳なくて・・・・・・・・・・・」









幸せで嬉しいのに、やっぱりどこか苦しくて後ろめたくて。









「・・・・・・・・・・・・優貴は、本当に優しい良い子だよ。 優貴はきっと大貴が幸せじゃなきゃ、幸せを感じられないと思う。 だから、大貴は幸せでいなきゃ。幸せにならなきゃ。 大貴の幸せは優貴の幸せで、優貴の幸せは優子さんの幸せなんだよ」









藍がオレの背中に腕を回して、そのまま背中を擦ってくれた。









藍の髪に顔を埋める。








「・・・・・・・・・・・・なんかそれ、オレらにとって都合良く解釈してるだけじゃない??」








「そうだよ。 優子さんの気持ちは優子さんにしか分からない。 それでも優子さんの気持ちを解釈したいってゆーなら、自分たちに都合よく捉えた方が良いじゃない。 それにワタシの見解は、誰も嫌な思いをしない思うけど?? 違う??」








藍が、ココでも藍らしい事を言うから『フッ』息を漏らして笑うと、藍の髪が揺れた。








何が『恨まれていた方が気が楽』だよ。 優子にどんなに恨まれていたって、藍と優貴が居る限り、オレは幸せでしかいられないのに。