全員の自己紹介が終わり、教科書が配られ、みんなは帰る仕度中。
私ももちろん帰ろうとしていた。

すると、背の高い美形の女の子が話しかけてきた。
あーめんどくさい…。

「ねぇねぇ、綾菜ちゃんだっけ?」
「……うん。」
「私、桜庭 杏里。よろしくね!」
「よろしく。」
「綾菜ちゃんって冷血だよね!」

それは褒めてるのか?嫌味?

「え、まぁ」
「はは、否定しないんだ。私そういう人嫌いじゃないよ。」

嫌いじゃない?この私を?
小学校以来かもしれない。いや、もしかしたらもっと前かもしれない。

…人に嫌い以外の感情をはっきり貰ったのは。

思わず固まる。

「綾菜ちゃん?」
「あ、ごめん。」
「はは。もうこれから帰るの?」
「うん。」
「方向どっち?」
「東が丘。」
「おー一緒!これって運命?!偶然?!」

いや、普通に偶然だよ。
言いたい気持ちをグッとおさえる。

「一緒に帰ろうよ!てかどっか寄ってかない?」
「ごめん、いい。」
「そんな冷たい事言わないでよ〜悲しいじゃん。」

あー。一回断ってるのにこういう、しつこい人ほんと苦手。

「いや、ほんとにごめん。」
「そっか…。じゃあまた今度行こう!?」

きっと、今度なんて言って一生誘われないだろう…。

「いいよ。」
「やった!じゃあ、せめて駅まででも一緒に行かない…?」

あぁ、もう。帰りの電車は本読みたいのに。
でも同じ電車乗るならバレる…。

「わかった。」

「おお、見た目と違って優しいね、綾菜ちゃん!
 いっそう好きになった!」

桜庭 杏里。変な子。

「じゃあ、行こっか!」
「うん。」

気づいてないわけじゃなかった。
このやりとりを刺すような視線で見ていた、

隣の席の人物に。