心の中でツッコミながらも、先生が保健室をあとにするのを目で見送る。

俺とひよりしかいなくなった保健室。

中谷は察したのかどうか知らないが、保健室をチラ見して親指を立てたあと先に教室へ戻っていった。

またひよりの顔に目を向けると、いつの間にかひよりは目を開けていた。

少し驚いて保冷剤を落とす。

「……秋…人…?」

「ひより!起きたか」

俺は保冷剤を拾って、またひよりの額にぽいっと投げた。

「ちょっ!痛いよ秋人」

ひよりは保冷剤をとって苦笑する。

無邪気なこの笑顔に、俺は何度助けられたかな…。

「あれ、ここ保健室?」

ひよりはむっくりと起き上がってあたりを見回す。

俺は頷いた。

「お前がバレーでヘマしたから俺がここまで連れてきてやったの」

すると、ひよりは驚いた顔をしながらも、頬を赤らめながら笑う。

「えへへっ…やっぱり私さっきのボール取れなかったか」

「…ったく。心配かけさせんなっての!」

俺はひよりの額をピンッと指で弾いた。

「痛っ!なんでさっきから腫れてるとこばっか狙うの!」

涙目になりながら額を押さえるひよりがなんだか幼く見えて、俺は思わず笑ってしまう。

「わりぃ。わざとじゃねぇ(笑)」

「絶対悪いって思ってないでしょー!」

俺をポコポコ叩いてくるひより。

懐かしくて、なんか胸の奥が熱かった。

それにしても……軽かったな、ひより。