俺は息を飲む。

親たちは離婚を俺に知らさず離婚を決めていたようだ。

思わず後ろに後退りしたとき、床の木材がギシッと鳴ってしまった。

(やべっ…!)

そう思ったときにはもう遅い。

不思議に思った父さんが、リビングのドアをガチャリと開ける。

俺の目の前には俺を見下ろす巨体。

冷や汗が流れるのを感じた。

俺が何も言えず、ただ黙って父さんを見上げていると、父さんが最初に口を開いた。

「何故お前がいる」

愛人以外に使う低い声。地獄の底から響いてくる気がする。

俺はひたすら冷や汗を流して、どうすればいいかとても迷った。

「何故お前がいる」

また父さんが同じことを聞いてきた。

俺は観念しなければ、と思い、父さんを下から見たまま口を開いた。

「ハハッ……。何もしかして父さんが愛人連れ込んでるの、俺が知らないとでも思った？」

「お前がいないときに七海たんを連れてきていたつもりだったんだが？」

その顔で“七海たん”て……(笑)

「父さんも色々おろそかになったね。母さんがよく家に帰ってきてたときは、もっと俺にバレないように犯罪すれすれのこととかしてたろ？」

バシッ！

俺の頬にこの世のものとは思えない痛みが走る。

一瞬頭が思考という行動を停止した。