休み時間、俺はすぐに教室を出て、自分の教室のドアについているタグを見た。

そこには、しっかり“2-2”と書かれている。

やっぱり一年の頃には戻っていないようだ。

じゃあひよりが生き返ったというだけか…。

皆も、ひよりが元からいたかのような雰囲気で接している。

俺だけが知っているようだ。

「秋人!次移動教室だから、一緒に行こ!」

ひよりに腕をつかまれて、俺はビクッとする。

「あ、ああ。教科書とってくるわ」

俺はまた教室に戻って、自分の机に手を突っ込む。

すると、カサッと何かにあたる感触がした。

それを取り出すと、いかにも女子が好きそうな便箋だった。

「なんだこれ…」

その便箋には『久我 秋人くんへ 沖田 美香より』。

どう見てもラブレターだった。

俺は便箋を持ったまま、固まる。

すると、ひよりが来るのが遅い俺の様子を見に、教室を覗きに来た。

もうクラスのほとんどが移動していて、俺とひよりしかいない。

「秋人?」

ひよりが言って、俺は手紙をバッとポケットに詰め込んだ。

「ん?ごめんごめん。今行くよ」

俺は教科書を取り出し、ひよりと一緒に視聴覚室へと向かった。帰り道、懐かしく俺とひよりは一緒に帰ることになった。

付き合ってるわけでもないのに、俺たちは何故か手を繋いで帰る。

もう慣れてしまって、今は俺もひよりもドキドキなど感じなくなってしまった。

しかし、久しぶりに手をつなぐと、ドキドキを感じる。

「ねーぇ、秋人?」

「ん?」

いつも帰り道、ひよりは俺にキラキラした目を向けて、楽しそうに話し出す。

そんな可愛らしいひよりを可愛いと思うことを忘れる自分がいた。

なのに何でひよりは俺と飽きずにいてくれたんだろう。

「あのね、私ずっと言いたいことがあったんだ。あの……」

突然赤くなったひよりの表情に、俺は少しドキッとする。

ヤバい。やはり久しぶりに会ったから俺の脳内はひよりとの密着を受け入れていない。

静まれ!俺の心臓よ!

あまりにも挙動不審になったため、俺はポケットに入っていたモノを落としてしまった。

「あっ…」

俺は急いでそれを拾おうとしたら、それより前にひよりにそれを拾われた。

さっき“沖田 美香”に貰った手紙だった。

ひよりはそれを俺の許可なく読み始める。

「ちょっ……」

「何これ。ラブレターなんて貰ったんだ、秋人」

ひよりの声が低くなっている。

確実に怒っていた。