「雪奏、聞こえるか?ごめんな?雪奏が苦しんでるのに気付いてやれなくて…もっと俺を頼ってくれよ…俺の一番大事な人は雪奏だから…」

握っていた雪奏の左手の薬指の付け根にそっとキスを落とした。

小さい時、父さんに聞かされた覚えがある。

《お父さんやお母さんよりもっと、いっぱい大好きで、大切にしたい人が出来たら、その子に左手の薬指にチュッてしてあげるんだよ?…それはずっと一緒にいようっておまじないだから。…でも、それは1人だけだよ?神様が怒っちゃうからね?》

…あのときは意味が分からなくてすぐに忘れたけど、今ならハッキリ分かる。…こんなに俺自身が雪奏を大切にしたいと思ってるから。

いや、『思う』より強い感情だ。

──雪奏に名前を呼んで欲しい。ずっと笑っていて欲しい。雪奏とずっと一緒にいたい。雪奏が欲しい。
…こんなに俺自身の感情があっただなんて気付かなかった。

フワッと風が暴れる。ッ!暴走しかけてる。

慌てて風を収めると、

握っていた方の手の雪奏の指がピクッて動いた。…ッ!!

「雪奏!聞こえるか!?俺だ!!颯斗だ!」また指が少し動いた。

俺は慌ててナースコールを押した。