あるていど学校から離れ、後ろを振り返って誰もいないと分かった俺は走っていた足を緩めて歩く。

 後ろの茉莉奈の様子を見ようとしても、あいつは不自然なくらい下を向いていたので、俺は引っ張るように歩いていくしかなかった。

 ったく、あんだけ酷いこと言ったのに、何で俺につきまとうかな?

 俺になんか構わずとも、さっきみたいに男から寄ってくるだろうに。

 気になる。…こいつは、何を考えてる?俺にどうしてほしい?

 堂々巡りの疑問を抱えつつ、俺はある所まで来てやっと立ち止まった。後ろを振り返れば、茉莉奈が顔を上げて俺を見ていた。

「翔…ここ…」

 ブランコと砂場しかない寂れた公園は、赤と黄色に染まる木に囲まれて、今日もぽつんと佇んでいた。

 俺と茉莉奈がよく遊んでいた場所でもあった、この公園は。

 どうしてだか茉莉奈がとても気に入っていて、学校が終わるとここを訪れてから家に帰っていた。

 良く言えば、二人の思い出がなんとなく残ってる公園なのだ。

「久々に、ブランコでも乗るか」

 躊躇する茉莉奈の手をひいて、俺たちは中に入った。