「その、これ……」
「ヌードだよ」
「…………」
やっぱりか。
「まぁ下着は脱がせなかったし、厳密には違うんだけどね」
言われなかったらヌードにも見えるでしょ、と相川さんは笑った。
まぁ、確かに……言われなかったら分からないけどな。
俺は絵に目線を移した。
白いベッドの上に白いシーツにくるまるように寝る萌。
周りには薄い桃色の花びらが散らばっている。
月明かりに照らされて白い顔やうなじ、手足が艶かしく浮き上がっている。
………本音を言うと、すごく綺麗な絵、だとは思う。
それを今の萌の前で言ってもいいものかは分からないから言えないけど……
「他の絵も見てよ。どれも最高傑作だから」
「み、未希さん……もう止めて下さいよぉ……」
「嫌よ。せっかく持って来たのに。それに、恥ずかしそうに顔を真っ赤にする萌ちゃんを見るのも楽しいし」
「うぅ………」
結局相川さんは全ての絵を俺に見せて、その間萌は隅の方で目と耳を塞いでいた。
絵は……まぁ、予想通り全てがヌードみたいなものだった。
ちゃんとしたやつではなかったけど。
安心したような、残念なような……安心したのがほとんどだな。
「そろそろ昼休みも終わっちゃうね。また見たかったらいつでも言ってね、霧谷くん。いつでも見せてあげる」
「はぁ……」
「今度は萌ちゃんと霧谷くんと、二人のヌードを描かせてね」
「遠慮させて下さい」
「あら残念」
じゃあね〜、と言って俺と萌は教室を出た。
萌は下を向いてスタスタと先を歩く。
「萌、待って下さい」
「…………」
「萌」
「…………」
駄目だ。
完全に無視されてる。
そんなにあの絵が堪えたのか。