「あたし戻るわね」
「おい……」
俺の呼びかけを無視して相田は自分の席に戻っていった。
まぁ、いいか。
本格的におかしくなったら相田のことは陸真がなんとかするだろう。
朝のホームルームの時間、俺は自分の席で息を整えながら相田と話す萌を見ていた。
相当急いで来たのだろう。髪が乱れている。
そんなところもかわいい、と思うあたり俺は相当萌に溺れていると思う。
「おはよう霧谷くん」
ホームルームが終わるとパタパタと萌は俺のところに来た。
「おはようございます。
今日は遅かったですね」
「えへへ……ちょっと、ね」
萌は髪を触りながら苦笑いを浮かべる。
なるほど……
「寝坊ですか」
「えぇっ!!どうしてわかったの?」
驚いたように目を見開く。
……図星か。まぁ普通に考えれば分かるよな。
髪、気にしてたし。
「萌は分かりやすいのよ」
「ゆっちゃん!」
「あたしも気づいてたわよ」
「えぇっ!?あたし、そんなに分かりやすいの……?」
しょぼん、となる萌を慰めるように相田は萌の頭を撫でる。
……萌は動物に例えるとうさぎだな。
白いやつ。
「萌、今日の昼休み僕に付き合ってくれませんか?」
「え?」
萌が相田の腕の中から不思議そうな目を俺に向ける。
「それとも先約でもありましたか?」
「な、ないよ!行く…行きたいです」
「それじゃあお昼を食べてから行きましょう」
頬を少し赤くして嬉しそうに萌は頷いた。
「ふふ……霧谷くんがあたしを誘ってくれるなんて、珍しいね、ゆっちゃん!」
「そうね……」
「でも霧谷くんの用事ってなんだろうね?」
「萌……」
「なに?」
「覚悟した方がいいわよ」
「??」
授業中そんな話がされていたけど、俺は気づかなかった。