「ありがとうございます」
あのときの写真か。
萌に頼まれて一枚だけ撮ったんだよな。
「萌、すごく喜んでたわよ。"霧谷くんが一緒に写真撮ってくれた〜"って」
写真を取り出している俺を見ながら、相田は一人言のように言葉を紡ぐ。
「未希姉から聞いたんだけど、あの子、彼氏ができたら未希姉に写真撮ってもらうんだ〜って、昔言ってたみたいよ。
約束覚えてたんだって未希姉驚いてたわ」
「萌らしいですね」
「そうね」
くすくすと相田が楽しそうに笑う。
俺も写真を見ながら自然と笑ってしまった。
俺は写真を撮られるのが好きな方ではない。
でも、チャイナ服姿の萌を見るのはあれで最後かもしれないと思うと、たまにはいいか、と思ってしまった。
「そろそろ戻らないとね」
もうすぐで担任が来る時間だわ、と相田は俺に背中を向ける。
確かにもう時間になるが……まだ萌が来ていない。
……大丈夫か?
「あ、忘れてた。未希姉から霧谷に伝言あったんだったわ」
「伝言?」
「えぇ……想像できるからあまり言いたくはないんだけど」
「?」
でも言わなかったらあたしがどうなるか……と小さく呟く。
というか、相田がいい淀むなんて珍しいな。
陸真に見せてやりたい光景だ。
「その……時間があったら未希姉のところ行ってあげて?多分、この写真撮った教室にいると思うから」
聞いて少し拍子抜けする。
そんなことで言うの躊躇ってたのか。
「分かりましたけど、それって萌も一緒にってことですか?」
「あぁー……特にそのことは触れてなかったからどっちでもいいと思うけど……」
……またしても少し歯切れの悪い返事が返ってくる。
……珍しいを越えていっそ不気味だな。
何かあったのかと聞こうとするとガラ、と扉の開く音がして担任が入ってきた。
そしてワンテンポ遅れて息を切らしたら萌も入ってきた。