文化祭が終わってすでに五日が過ぎた。
そのうちの二日は後片付けやらなんやらでバタバタしていて、とても授業には思えなかったけどな。
今も教室では文化祭の……ある話で持ちきりだ。
「ねぇ知ってる?文化祭ですっごいイケメンがいたって話!」
「知ってるー!!あの執事の人だよね!?ちょーかっこよかった!!」
「峰くんに聞いてみたけど教えてくれなかったんだよねー」
朝から聞こえてくる女子の興奮した声。
最近はこれを聞くのが日課になってきている。
本にも集中できない。
「はぁ………」
ため息をつきたくもなる。
「おはよ、霧谷」
ぽん、と肩を叩かれて振り向くと相田が立っていた。
「おはようございます、相田さん」
相田にも素の俺はばれているが、場所が学校ということもあり、一応丁寧な言葉使いをする。
最初は面倒だったが慣れてしまえばラクだった。
「学校全ての間で盛り上がってるわね。謎のイケメン執事くん」
「……迷惑なことこの上ないです」
ご愁傷さま、と言って笑っているあたり、相田はこの話を楽しんでいるに違いない。
ほんと、陸真と相性が合うと思う。
……そういえばまだ萌が来ていない。
いつもなら来てる時間、だよな。
「萌ならもうすぐ来るんじゃない?今日は少し遅れるってメールあったから」
「…そうですか」
考えていたことを指摘されたことはあえて無視する。
相田のにやつく顔が陸真に重なって、面倒なことになるのは明らかだからな。
俺は相田に気づかれないようにそっとケータイを見る。
相田にはメール送ったのか……
こんなことで嫉妬する俺は、自分で思っているよりも心の狭い人間らしい。
「ま、あたしにとっては都合よかったんだけど。
はいこれ。未希姉から」
文化祭のときの写真預かってきたわ、と白い封筒を渡される。