「一枚だけ……お願い霧谷くん」



そっと見上げて霧谷くんを見る。


じーっと見つめると諦めたように霧谷くんはため息をついた。



「……一枚だけね」


「!!ありがとう」



よかった……やっぱり霧谷くんは優しいなぁ。



「はーい、イチャイチャするのはあとでね。撮るよー」


「い、いちゃいちゃって……」



カアァ、と顔が熱くなる。



「いくよー、ハイ、チーズ」



カシャリ、とカメラのシャッター音がしたのと同じぐらいにあたしは霧谷くんに引き寄せられるように近づいた。



「え……」



今………



「うん!いいの撮れた。現像したら夕希に渡しておくね」


「あ、お願いします……」


「はーい」



じゃあまたね〜、とあたしと霧谷くんは未希さんに教室を追い出された。



「ごめんね霧谷くん。未希さんが……」


「あぁ……確かに少し驚きましたね」



少し困ったように霧谷くんは笑う。


うぅ……やっぱり?


教室に向かう廊下を歩きながらあたしは小さくため息をついた。



「そういえば、萌は知ってたんですね」


「え?」


「相川さんのモデルの話」


「う、うん……その、ゆっちゃんから聞いてたから」


「?…そうなんですか」



少し訝しげな顔にになったけど、なんとか誤魔化せた、かな?


うぅ……あのことは絶対に知られたくないよぉ。



「あ、流と桃ちゃんいたー!」


「やっと見つけたわ!」


「峰くん?ゆっちゃんも」



二人が向こうからぱたぱたと走ってくる。



「さ、行くぞ流」


「は?」


「さすがにその格好で自分が霧谷です、なんて言えないだろ。着替えに行くぞ」


「ちょ、おい!」


「文句は後でな」



行っちゃった……



峰くんは霧谷くんを引きずるようにどこかへ行ってしまった。