「僕たちもどこか行きます?と言ってもあまり時間はないですが……」
「ほんとだ…」
いつの間にか時間は過ぎていて、文化祭が終わるまであと一時間ぐらいになっていた。
「一つぐらいなら回れると思いますよ。どこ行きます?」
「うーん……」
どこ、がいいのかな……
本音を言えば、あたしは霧谷くんといっしょにいれるならどこだっていいんだけどな。
「あ、」
「決まりました?」
「うん、ほんとにどこでもいい?」
「いいですよ。萌が行きたいところで」
「ありがとう」
霧谷くんといっしょに向かったのは普段は使われていない教室。
その間霧谷くんはあたしと手を繋いでいてくれて……
それがすごく自然で……嬉しくて霧谷くんに不思議そうな顔をされた。
「……ここ?」
「うん。……やっぱり、嫌だった?」
あたしが霧谷くんといっしょに来たのは、写真同好会が作品を展示している教室。
「いや、意外で……」
「やっぱり?」
くすり、と少し笑いながら中に入るとあまり人はいなかった。
「あ、萌ちゃん」
「こんにちは。遅かったですか?」
「んーん。全然。さっきまで人がいっぱいいたからねぇ、追い返したとこ」
追い返したって……
「変わらないですね」
「いきなり変わったら怖くない?」
「ふふ、そうですね」
くすくすと笑いあっていると、後ろから霧谷くんの困ったような声がした。
「あ、ごめんね霧谷くん。この人は……」
「どーも、相川 未希(アイカワ ミキ)です。夕希の従姉妹だよ」
「相田の…?」
霧谷くんは少し驚いたように未希さんを見る。
「そう。未希さんの写真すごいんだよ。何度も賞とってるし……
あたしも小さいときはよく撮ってもらってたの」
へぇ、と言って霧谷くんは軽く自己紹介をした。