「じゃあ、よろしくね」
「りょーかいっす」
「分かりました」
司書の先生に頼まれたのは新しく入った本の整理。
毎月新しいのが入って来るけど、今回は夏休み前ということもあって少なめ。
これならすぐに帰れそう。
「さー。ちゃっちゃっとやるかぁ」
「そうだね」
司書の先生は用事があるとかで、今ここにいるのはあたしと峰くんだけ。
「あ、峰くん」
「何ー?」
本を取り出す度に紙のこすれる音が耳に響く。
「霧谷くんから伝言で、えーっと、早くしろよって…」
「へぇ?あいつが」
少し驚いたような声を出してから、何故かいきなり峰くんは笑いだした。
「峰くん?」
「ん?いやー……っくく。気にすんな。こっちの話だからさ」
「……?」
あたしには分からない問題かな?
……まぁいいや。さっさと終わらせよう。
あたしは止めていた手を再び動かし始める。
峰くんのせいでまたすぐ止まることになるけど。
「桃ちゃんさー、きりやんのこと好きだろ?」
「……へ?」
バサバサとあたしの手から本が落ちた。
新品なのに勿体ない、と頭の隅っこで思うけど、今あたしの脳内では峰くんの言葉だけがぐるぐると回っていた。
『きりやんのこと……好きだろ?』
すき……
好き……?
な、なんで知ってるのぉ〜〜〜っ!??
カアァ、と一気に顔が熱くなる。
「な、なっ、なんで……!?」
「あ。図星だ」
にやり、と笑う峰くんが一瞬だけ悪魔に見えてしまった。
「いやー、俺から見たらバレバレだったぜ?きりやんと話すときいつも顔赤いし、言葉つまってるし」
「うそっ!??」
あたしってそんなに分かりやすいの!?