ドキドキする胸の音を誤魔化すように、あたしはテーブルに置かれた紅茶を一口飲む。
あ、おいしい。これどこで売ってるんだろう。
「萌」
呼ばれて顔をあげると、まだ霧谷くんはあたしを見ていた。
うぅーー………照れる。
「な、何?」
「おいで」
……カップ落としそうになりました。
だって物凄く優しい顔で言うんだもん。
ドキン、とこれでもかというほどにあたしの心臓が跳ねた。
「萌、おいで?」
「………うん」
カップを置いてそろそろとあたしは霧谷くんの近くに寄る。
ベッドの下にちょこんと座って、霧谷くんを少し見上げる。
そういえばいつの間に着替えたんだろう。
私服、初めて見るなぁ……
シンプルだけど、霧谷くんに凄く似合ってる。
今は眼鏡もしてなくて、長い前髪は分けられているので、いつもは隠れている霧谷くんの目が見えている。
なんか、新しい霧谷くんを見られた気がするなぁ。
かっこいい……
「きゃっ……」
ぼんやりと霧谷くんを見上げていたら、急に引き上げられてあたしは霧谷くんの腕の中にいた。
「き、霧谷くん?」
カアァ、と体が熱くなる。
うぅー…な、慣れない。
「ごめん。俺、結構嫉妬深いかも」
耳元で囁かれるように言われてぴくり、と肩が揺れてしまった。
だ、だってくすぐったかったから……
腕の力が弱まりあたしはおずおずと霧谷くんを見上げた。
「何?誘ってるの?」
くすっ、と笑って霧谷くんはあたしの髪の中に手を入れる。
ぐっ、と引き寄せられたかと思うと、あたしと霧谷くんの唇は重なった。