……え、本当にユウちゃん?
さっきと全然、雰囲気違うんだけど……
いきなりの状況で頭が回らない。
だから霧谷くんがあたしを呼んでいたことにも最初気づかなかった。
「萌?」
「………へ。あ、何?」
霧谷くんを見ると少し困ったような顔をしていた。
「ごめん萌。先に言っとけばよかったな。こいつ、俺の弟」
「ども。弟の優です。兄貴がいつもお世話になってます」
…………弟?
「えぇ〜〜〜〜っ!?」
「あっはは。萌サン、反応ナイス」
ケラケラとユウちゃん、じゃなくて優くんが笑う。
「じ、じゃあ男?」
「そうですよ」
ぜ、全然見えない……というかあたしよりよっぽど女の子らしい。
こういうの、女として負けてるって言うのかな……
「で、優なんか俺に用事?」
「あ、借りてた辞書返しにきた。そこ置いておいたから」
「あっそ、なら早く出てけ」
「兄貴冷たくね?いいけどさ」
くくっ、と笑って優くんは立ち上がった。
「あ、そだ。萌サン」
「え?」
すっと近寄って、優くんはあたしの耳元で囁いた。
「……じゃ、やってみて下さいね」
「えっ、」
「絶対おもしろいの見れますから。んじゃ、あとは二人でごゆっくり〜」
ひらひらと手を振って優くんは部屋から出ていった。
「……萌、優に何言われたの?」
「えっ!いや、別に?」
「……ふーん」
……あれ、なんか機嫌が悪い?
霧谷くんは飲み物をテーブルに置き、ベッドに腰かけてあたしをじっと見つめる。
……て、照れるのであまり見てほしくないのですが。
付き合っても全然慣れない。
いつもあたしだけドキドキしてるような気がする。
……ちょっと、悔しいな。