「入ってて。今飲み物とか持って来るから」
「う、うん」
パタン、と扉が閉まる。
「………ふぅ…」
き、緊張する〜〜!!
心臓ばくばくだ……
ついきょろきょろと周りを見てしまう。
今、あたしは、な、なんと霧谷くんの家に来ています!
遡ること約一時間前……
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「あ、雨が……」
天気予報だと降水確率低かったんだけどなぁ……
「あら、もしかして降ってる?」
「ゆっちゃん」
帰ろうと玄関で靴を履き替えていたら雨が降っているのに気づく。
たまたま会ったゆっちゃんと空を見上げるけど、全然止む気配がない。
どうしよう……
ゆっちゃんはちらちらと時計を見ている。
「用事でもあるの?」
「んー、下の子のお世話」
「そっかぁ」
じゃあ早く帰った方がいいよね。
雨、止まないかなぁ……
「何してるの、萌?」
「き、霧谷くん!」
名前を呼ばれて振り向くと、霧谷くんが思っていたより近くにいて少し驚いてしまった。
「あ、えっと、雨が……」
「雨?…あぁ、降ってきたんだ」
片言なあたしの言葉に一瞬頭に"?"を浮かべる霧谷くんだったけど、外を見て納得したように笑った。
「僕折り畳み持ってるから、一緒に帰りますか?」
「い、いいの?」
「いいですよ」
やった!これで帰れる!
あ、でもゆっちゃんが……
「ごめん霧谷くん。あたしはいいからゆっちゃんお願いしてもいい?」
「相田さんを?」
不思議そうな顔をする霧谷くんにわけを説明する。
「そうですか。分かりました」
よかった。これでゆっちゃんが帰れる。
霧谷くんとも一緒に帰りたいけど……
いつも見てるとゆっちゃん、妹さんたちのお世話大変そうだもん。
今回はゆっちゃん優先だよね。