「ねぇ…さっきから萌、動かないけど。大丈夫なの?」



あのままあそこにいると注目を浴びるということで、俺たちはとりあえず萌の家に向かっていた。


鞄は相田が出るときに一緒に持ってきていたらしい。


さすがは親友。



「そう言われるとそうだな。桃ちゃん、生きてる〜?」



陸真も声をかけるが萌は何も反応しない。



「萌?」



そっと声をかけるがそれでも反応しない。



……もしかして怒ってたりするのか?



「萌……」


「霧谷ちょっと黙って」


「…………」


「…すぅ…すぅ……」


「…………」


「もしかして桃ちゃん寝てる?」


「みたいね」



くすくすと相田はおかしそうに笑う。



はぁ……焦った。



「あ。流、今焦っただろ?」


「……うるさい黙れ」


「うわ、図星〜」



ケラケラと陸真はお腹を抱えて笑う。


相田も笑い始めたし……



陸真、あとで覚えとけよ……



陸真にからかわれながら歩いていると萌の家が見えてきた。



「さすがに中には入れないでしょ?あとはあたしに任せておいて」


「あぁ。よろしく」



抱いていた萌を相田に渡そうとする。



「んっ…霧谷くん……?」


「あ、」



萌、起きたか?


ゆるゆると顔をあげるところを見ると、まだ酔ってるんだろうな。



「霧谷くん……」



ぼー、と俺を見つめていたかと思うと萌はそっと顔を近づけた。



「え……?」



一瞬だけ唇に感じる温もり。



「えへへ……驚いた?」



ふにゃりと笑って、萌は俺の腕からするりと抜けた。



「霧谷くん……だぁい好きだよ〜」



へにゃ、と笑って萌と相田は家の中に入っていった。