「きりやくん。かえしてよ〜」
「だめ。これ酒だから」
「え〜、違うよ。ちょっと大人のジュースだもん」
「それを酒と言うんです。いいから、もう帰りますよ」
むう、と頬を膨らませる萌の腕をつかむ。
「おいおい、待てよ」
ガシッ、とその俺の手をつかむやつ。
「後から来て横取りとかはねぇんじゃねぇの?」
「……は?」
こいつ何言ってんだ?
隣の男を見るとにやにやと笑っていた。
「もともと萌チャンはオレが狙ってたんだぜ?」
「……萌に酒飲ませたの、お前?」
「あぁ。だってそうしないとお持ち帰りできないだろ?」
こいつ……何言ってんのかわかってるのか?
「申し訳ないけど、萌は僕の彼女なので」
ぐっ、と萌の腕をつかんで立たせようとするが……
「やだ〜!」
「は?」
萌はその場から動こうとしない。
もしかして俺よりこいつの方がいいのか……?
「きりやくんも、ジュース飲も?」
ふにゃ、と笑って萌は自分の隣の席をぽんぽんと叩く。
……つまりはここに座れってことだろうが、これ以上ここに萌を置いておきたくない。
というか、これ以上この男の視界に萌を入れておきたくない。
……自分でも小さい男だと思う。
「……萌」
「なぁに?きりやくん」
きょとん、といつもよりほんのり赤い顔で俺を見つめる。
「このままここにいるなら、萌が物凄く恥ずかしいと思うことをしますが、それでもいいですか?」
「ほへ?はずかしいこと?」
「はい」
にこり、と笑って萌を見る。
いつもなら俺が笑うと萌は頬を染めるが、酒のせいか今日は何の反応もなかった。
まず、すでに顔赤いし。