「ゆっちゃん…どうしよう。あたしこのままじゃ死んじゃう!」


「大袈裟な……」



席替えをしてから一週間。


只今ゆっちゃんと中庭でお昼ごはん中。



「今まで遠くから見ているだけで幸せだったのに……と、隣の席だなんて………!」



恋愛経験の浅いあたしにとってはいきなりすぎてハードルが高いよぉ……



「ただ挨拶するようになっただけじゃない」


「それでもドキドキしすぎてダメなの!!」



だってだって……朝とか帰り、とか……「おはよう」とか「さよなら」とか言ってくれるんだよ?


今までなんの接点もなかったあたしに挨拶してくれるんだよ?


それだけでどうしようもなく嬉しくなって……


それぐらい、あたしは霧谷くんのことが好き……大好きだ。



それに、この一週間で霧谷くんとの距離が近くなって霧谷くんのいろいろなところを見れたし……


この一週間で益々霧谷くんのこと好きになった気がする。



「ゆっちゃん聞いて!」


「はいはい」



あたしはお昼ごはんそっちのけでゆっちゃんに話す。



「前にゆっちゃん、霧谷くんのどこがいいの?って聞いたでしょ?」


「あー、言ったね」


「あたし、隣の席になって霧谷くんのいいところいっぱい見つけたの!!」



ゆっちゃんにも霧谷くんのいいところ、ちゃんと知ってほしい。



「まず、背が高いでしょ。手が綺麗で、字も凄く丁寧で綺麗なの。あと声も聞いててうっとりするし、性格も優しくて……笑顔が凄く可愛いの」



ゆっちゃんもそう思うでしょ?と聞くと、ゆっちゃんは凄く曖昧な顔をした。



「笑顔って……あいつの笑顔とか分からなくない?」


「そ、そんなことないもん!」



あたしには分かるもん!


たまに笑ってるもん!



むぅ、とむくれるとゆっちゃんはケラケラと笑う。


いいもん、別に。あたしには分かるんだから。


中断していたお昼を再開してあたしは卵焼きを口に入れた。