「あ、夕希ちゃーんっ!!」
「げっ」
明らかに嫌そうな顔をして振り返る相田。
そして……
「ゆっちゃん、顔が拒否しすぎだよ……」
「いい?あの笑顔に騙されちゃダメよ、萌」
「えぇー」
相田の隣でやわらかく笑う桃園さん。
「夕希ちゃんも桃ちゃんもおはよ」
「おはよう峰くん」
ふわりと桃園さんは優しく笑う。
「桃ちゃん、夕希ちゃんと同じクラスなの?」
「うん!峰くんは離れちゃったね」
「そうなんだよ〜。俺だけ仲間外れ」
「いい気味だわ」
「夕希ちゃんひど」
楽しそうに話す桃園さんを見ていると、不意に陸真と目があう。
…………にやり。
…………うぜー。
多分だけどこいつは気づいてる。
俺が、桃園さんのことを好きだということを。
「あれ、霧谷じゃない。あんたもこのクラス?」
「はい。また一年、よろしくお願いします」
俺に気づいた相田がよろしく、と軽く挨拶する。
「ほら、萌も」
「ゆ、ゆっちゃん…」
後ろからおずおずと顔を見せる桃園さん。
にやにやとしている陸真が視界に映る。
「き、霧谷くん…よろしくね」
恥ずかしそうに俺を見上げて言う桃園さんに自然と頬が弛む。
「はい。よろしくお願いします……桃園さん」
桜の花びらがこれからを予感させるように風に吹かれて舞った。
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「今思うと一目惚れだな、俺……」
椅子にもたれ掛かりながら、俺は萌を好きになったきっかけを思い出していた。
萌は、いつから好きだったんだろうか……
今度聞いてみるか……の前に、俺の素を見せるのが先、か。
「幻滅、されたりして……」