桃園さんはあわあわと手と頭を振って否定する。



嫌なわけじゃないのか……



「あ、あたしなら全然平気なので、気にしないで下さ……っ」


「無茶しないで下さい」



少し動いただけでも痛そうに顔を歪める。



「うー……すみません。じゃあ、保健室までよろしくお願いします……」


「はい」



そっと俺は桃園さんの手をとり、できるだけ足に負担をかけないように歩いた。



「あ!自己紹介まだでしたよね?
あたしは一年の桃園 萌です」


「一年の霧谷です」


「え!同じ学年だったんですね」



にこりと笑って桃園さんは俺の方を見た。



「みたいですね」



俺もつられて少し頬を弛める。


すると桃園さんの頬が微かに赤くなった。



……気のせいか。



「保健室着きましたよ」


「う、うん」



俺はガラッと保健室の扉を開く。



「すみません。先生、いませんか」


「…………」


「いない、みたいだね」


「みたいですね」



とりあえず立ったままだと辛そうなので、俺は近くにあった椅子に桃園さんを座らせた。



「ここまででいいよ。きっと先生もすぐ来ると思うし」


「そうですか。……分かりました」



とは言ったものの、やっぱり心配だ。


職員室寄って保健の先生呼ぶか……



「では、」


「霧谷くん!!」



出ていく直前に名前を呼ばれて振り返る。





「……ありがとう」





そう言って、桃園さんは笑った。



初めて、俺に向けてくれたやわらかい笑み。



「……っ、やばい」



どうしようもなく嬉しい。











「おっ、流やっと来た。遅いじゃん」



職員室に寄ってから玄関に向かうと何故か陸真がいた。