「よかった……」
ほっと安心したように笑う相手にもう一度笑って、ノートも拾って桃園さんは相手を見送った。
「……ったぁ…」
「………?」
相手もいなくなったので俺もこの場を離れようと階段を桃園上ろうとしたとき、後ろから聞こえた小さな声。
そっと覗くと桃園さんがうずくまって、足を押さえるようにしていた。
もしかして……足を、怪我してたのか……?
桃園さんは足を庇いながら一段ずつ階段をおりていく。
多分、保健室に向かっているんだろう。
それにしても危なっかしい。
足を怪我しているとはいえ、ふらふらしすぎじゃないか?
落ちそうでハラハラする……
「…ひゃっ……!」
「………っ!!」
ぐらり、と案の定足を踏み外し落ちそうになる。
俺はその手を咄嗟につかんでいた。
「…え、あれ?」
落ちると思っていたからか、桃園さんは何が起こったのか分からない、というように目をぱちぱちと動かしていた。
「大丈夫、ですか?」
「え?あっ、はい。すみません」
やっと状況を理解したのか桃園さんは申し訳なさそうに謝る。
……違う。俺が欲しいのはそんな言葉じゃない。
「足、痛みますか?」
「え、どうして……」
驚きと疑問の色を顔に浮かべて桃園さんは俺を見る。
「あっ……さっきの、見てたんですか……?」
「見るつもりはなかったのですが……」
すみません、と謝ると桃園さんの頬がうっすらと赤くなった。
「………っ、」
やばい……俺まで赤くなりそうだ。
「保健室まで付き合いますよ」
咄嗟に出た言葉に桃園さんはえぇっ!?と驚きの声をあげた。
……ちょっとショックだな。
「嫌ですか?」
「えっ、ち、違うんです」