初めて萌を見たのは入学してすぐの頃だった。
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「誰だあれ……」
昼休み、特に一緒にいる友達もなく俺は一人、屋上で昼食を食べていた。
ふと外を見ると、中庭でぼんやりと空を見上げているやつがいた。
何してるんだ……?
ちょっとするとその女子に近づく一人の生徒。
確か……相田、だよな…同じクラスの。
クラスのほとんどの奴等は、地味な姿の俺に話しかけようとしない。
俺が敬語を使うのも近より難い原因の一つにあるとは思うけど。
そんな俺に普通に話しかけるやつ。
それに陸真がよく相田の話をしている。
茶色の髪はさっぱりとしたショートカットにしていて、勝ち気そうな瞳。
スタイルもよくて大人っぽい。
性格も自分の思ったことははっきり言う、という真っ直ぐなやつ。
……まぁ、モテるよな。
相田はぼんやりと空を見上げていた女子に近づき、何か話をしてから一緒に弁当を食べ始めた。
……待ち合わせでもしてたのか。
俺はなんとなくその二人を見ていた。
後ろ姿だから相田と一緒にいる女子の顔は見えないけど……
自然な栗色の髪とか、華奢な体つきとか……かわいいな、と思う。
………俺、何考えてたんだ。
「馬鹿馬鹿し……」
もう教室戻るか。
ぐっと背伸びをしてから最後に、と思い相田たちのいる方へ目を向けた。
「………っ!!!」
ドクン、と心臓の音が大きく聞こえた。
あの女子はこちらに顔を向けていて、そのかわいらしい顔に優しい笑みを浮かべていた。
二人はそれから弁当を片付けて校舎の中に入っていった。
その間、俺はその優しい笑みを浮かべる女子から目を離せなかった。