早くゆっちゃんと流のところに戻りたいなぁ、とちょっと失礼なことを考えながら目の前の男の子を見る。
「うん、えーと……今、大丈夫かな?」
にこ、と目の前の人は爽やかな笑顔を見せる。
時間があるってことかな。
ちらりと時計を見る。
「もうちょっとでチャイム鳴りますよ?」
「あ、そっか」
………?
この人は何をしたいんだろう?
目の前の人が戻らないのにあたしが戻るわけにもいかず。
しばらく無言の時間が過ぎる。
「じゃあ、昼休みに少し時間をくれないかな?」
話したいことがあるんだ、とどこか真剣な瞳を向ける人。
よく分からない、けど大事な話なんだろうな。
「分かりました」
「よかった!じゃあお昼食べ終わったら校舎裏の花壇に来て」
待ってるから、という言葉に頷くと、にこりと笑顔を向けてその人は帰っていった。
……すごく失礼だけど、あの人なんて名前なんだろう。
でもお昼に会うし、そのときに聞けばいいかな。
席に戻ると、ゆっちゃんがにやにやしていて。
「で?佐藤に何言われたのよ」
「さ、佐藤……?」
誰のこと?と聞くとゆっちゃんにため息をつかれた。
「やっぱり、萌知らなかったんだ……
佐藤っていうのはさっき萌を呼び出していた男子のこと」
「あ、あの人佐藤くんって言うんだ。ゆっちゃんの知り合いなの?」
すごく真面目に聞いたのに、またしてもため息をつかれて。
あたし、そんなにヘンなこと聞いたのかな。
「萌、あんたはもっと外に関心持ちなさい!
佐藤って女子の間じゃ結構人気なのよ?」
「そ、そうなのっ?」
でも、言われてみれば整った顔してたかも。
爽やかな笑顔とか似合ってたし……