誰が聞いているかも分からないのに……


ゆっちゃんも流も、人目を気にしなさすぎだよぉ。


はぁ、と思わずため息がもれた。



「まぁ、霧谷がそうなるのも分からないワケではないんだけど……」


「へ?」



どういう意味……?


首を傾げるあたしにゆっちゃんは苦笑する。



「萌は鈍いからねぇ。自分が人気あるのにも気づかない。
そんな萌に霧谷はハラハラだと思うよ?」


「そう、なの?」


「……それ普通に聞く?」



だってそうなのかな、って気になったから……



「そうですね。だからこそのコレです」



とん、とあたしのうなじを指さす流。


そこには流が昨日つけたのがあって……


カアァッ、顔が熱くなる。



「コレがあってもまぁ心配ではありますが、気休め程度にはなると思いますよ」


「違いないわ」



くすくす笑う流とゆっちゃんに対して、あたしはただ黙って俯いて。


ちらり、と流を見るとメガネの奥から目が笑っていた。



うぅ……流の意地悪っ!


むすっと頬を膨らませると、ゆっちゃんにも流にも笑われてしまい、ますますむぅっとなる。



「萌ちゃーん、」



名前を呼ばれて振り向くとクラスの子が手を振っていた。



「萌、呼ばれてる」


「え、あたし?」


「他に誰がいるの。名前呼ばれてたでしょ」



あ、そっか。


ちょっとごめん、と言って手招きされるままにドアの方へ行く。


そこには知らない男の子がいてあたしの、頭には"?"が浮かんだ。


クラスの子は自分の仕事は終わったとばかりに戻ってしまい、あたしは困惑してしまう。



「え、と……あたしに何か用事ですか?」



知らない人だけど、あたしを呼んだってことは何かあるんだよね。