すっ、と霧谷くんの手があたしの背中を撫でた。


それに思わずびくぅっ、と体が反応する。




な、んで………


いつの間にか、カーディガンが脱げてる。



「き、霧谷くん……離して……っ」



ぐっと体を押すけどびくともしない。



「きり……やっ……くん……っ」



尚も背中に感じる霧谷くんの温もりに、恥ずかしくて顔が熱くなる。



「ひゃ、ぁ……っ、や……」



こ、声がっ!!


自分の口から洩れた声が、まるで自分のじゃないみたいに聞こえて、恥ずかしくてたまらない。


ぎゅっと霧谷くんの服をつかむ。



「萌、こんな服着てきたら……」



耳元で聞こえる霧谷くんの声に、なんだか色気を感じてしまって恥ずかしい。




「襲われちゃうよ?」




妖しく囁く霧谷くんの声と、直接あたしの背中をなぞるその手。


ぐらり、と脳が揺れた。



「分かった?」



こくこくとあたしが頷くと、霧谷くんは満足そうに笑ってカーディガンを着せてくれた。



それも恥ずかしかったけど……


何よりもさっきの出来事が強烈に印象に残りすぎて。


そのことを整理するので精一杯だった。



「萌」



後ろからぎゅうっと抱きしめられる。



「今日のこと、忘れないよ。ありがとう、萌」


「……うん」



その一言で、ほんわりと温かな気持ちになる。



……あたしって単純なのかな?


でも、やっぱり霧谷くんが喜んでくれたから、まぁいいや。


と思うあたしは、やっぱり単純だなぁと思った。



「霧谷くん…」


「ん?」



あたしは振り向いて霧谷くんの顔を真っ直ぐ見つめた。


ドキドキして、そらしたくなる気持ちを我慢する。


最後に……あたしに勇気をください……!!




「大好き、だよ……流くん」



カアァ、と赤くなる顔を見てほしくなくて、あたしはすぐに前を見る。



「……俺も」



あたしの首に顔をうずめて囁く霧谷くん。



もしかして……霧谷くんも照れてるのかな。


そう思うと自然に笑みがこぼれる。




今日一日が、流くんにとって特別な日になってるといいな……