彼が私にもたれかかって寝てしまったのは、偶然の小さな出来事だった。

たまたま、疲れて寝てしまった。
たまたま、隣に私が座ってた。

私の肩に当たる肩が、すごくあたたかくて、思ったよりも柔らかくて、要するに気持ちよかった。

過去10年の私の生き様をよく知る友人達が、ニヤニヤしながらこちらをみていた。

「またぁ、だめですよぉー」

「…まっさかぁ」

この時は、本心でありえないと思っていたのだ。

彼には、私より若くてきれいな彼女がいたし、職業柄その他にもたくさんのきれいな女友達がいた。
私はそのことを気にしていたわけではないとは思うけど、彼を恋愛対象として見てはいなかった。

はずだったのだが、やってしまった。

何度かふたりで食事をしたことはある。

ある夜、三軒ハシゴして、酔っ払っていた。
頭をなでなでされ、抱きしめられ、キス。何度も。

もちろん嫌じゃなかった。

その日はそこまでにして帰った。

自分に驚いていたからだ。
彼女がいるのに女友達にあっさり手を出そうとした彼に、全くはらが立たないし、彼女に罪悪感すら抱かない自分に。

結局、後日、体の関係をあっさり持つ。
何度か繰り返しているが、彼女と別れて欲しいとは思ってない。
そんなことされたら困るから。