去年、彼が、当番に顔を出してくれるようになって。

もう、それだけでわたしは、うれしくて。

気付けば、わたしは。女子受け最悪なこのコワモテくんを、目で追うようになってしまったのだ。



「……犬飼くんって、クマみたいだよねぇ」

「はあ?」



この高校の図書室は新刊もあまり入ってこないし、古くて寂れてるから。利用者が少ないのをいいことに、ぽつぽつと会話をすることができる。

突然のわたしの言葉に、犬飼くんは黒いスラックスのポケットに手をつっこんだまま、怪訝そうに眉をひそめた。



「あ、クマって言っても、リアルな方のクマじゃないよ? なんていうか、テディベアみたいな?」

「……俺は三宅の思考回路がよくわかんねぇんだけど」

「ふふ、わかっちゃったら困るなー」



だってそうしたら、わたしがきみのことすきだって、バレちゃうし。

けど、わたしが犬飼くんのことかわいいテディベアに思えるのは、ちゃんと理由があって。