部屋について。



「じゃーな」


 
中に入らず帰ろうとする流川に。



「あ、上がってコーヒーでも飲んでいけば?」


 
なんて言ってしまった。

 
わ、私…何言っちゃってんだろ…



「寂しいんだろ」


「ち、違うしっ。ただ…」


 
ただ…なんだろう。

 
ちょっと、一人になるにはまださっきの恐怖が抜けきってなくて。

 
う。

 
流川の言うとおり、私は寂しいのかもしれない。

 
く、くそ…



「じゃ、飲んでってやるよ」


 
もじもじする私の横を抜けて、流川はさっさと部屋に上がりこんだ。

 
す、素早いぞ、コイツ…

 
でも、一応、助けてもらったことだし。

 
こ、ここはコーヒーの一杯くらい、ご馳走してやってもいいだろう。

 
うん。


 
どっかりとソファに座った流川のおでこには、まだ汗が光っていた。

 
そうだ…私…

 
まだ、お礼言ってなかった。

 
コイツを心配して出て来たからこうなっちゃったとはいえ…

 
コイツのほうも、私を心配して、こんなに汗をかくほど急いで来てくれたんだろうし…


 
コーヒーを淹れて。

 
流川の前に置く。

 
悔しいが…でも。



「あのさ」


「ん?」


「ありがと、ね」


「あ?」


「助けてくれて。来てくれて。…送ってくれて」


「ああ」


 
ふっと笑う流川。

 
その目は何だか優しくて。

 
私は焦って視線をそらす。