「で、でも…昨日…」


「昨日? なんだよ」


「あ…あの…アパートの外でさ…その」


「アパートの外? が、なんだよ」


「女の人と…一緒だったじゃん」


「女?」


 
私の言葉に、流川の眉間に皺が寄る。



「いつでも来ていいのよ、とか何とか…女の人言ってたじゃん」


「ああ…そういえば。っていうかお前、見てたの?」


「え? あ、み、見てたっていうか、見えちゃったのっ」


 
私は覗き魔ではありませんっ。

 
そういう態度をおもいっきり全身に表して流川を見上げれば。



「は~ん。それで」


「え?」


「どうも拒絶が強すぎると思ったぜ。お前、それ見て、俺のこと一気に怖くなったんだろ」


 
細い道。

 
真っ暗な歩道で私の顔をのぞきこむ流川の顔に。

 
街灯の明かりが薄っすら映る。

 
よく通った鼻筋の影。

 
いたずらっ子みたいに目が笑ってて。

 
私は、ぐっと身をそらす。



「や、別にそんなんじゃないもん」


「へ~、見てたのか、そうか」


 
流川は、やっと納得がいったみたいな顔をして腕を組んだ。



「その人のところに行けば良かったじゃないっ」


「それはできない」


「な、なんでよ」


「知りたいか?」


 
ふふん、と笑う流川。

 
腕を組んでるから、一層、偉そうで。



「べっ、別に。あんたがどこで何してようと構わないしっ」


「あっそ」


 
ホントは…ちょっと気になるけどさ。