私はしばらく流川の顔を見ていたけれど。

 
情けなくなってうつむいた。



「どれ、帰るぞ」


 
ぽん、と頭の上に手のひらの温度。

 
見上げれば。



「送ってやる」


 
流川が微笑んで。



「え?」


 
…と言う間もなく、流川はドアのほうへ歩いていってしまう。



「ま、待って」


 
その後を追いかけて。

 
私と流川は外に出た。


 
外にはもう、さっきの男の姿はなかった。

 
ほっと息を吐く。

 
ずんずん歩いていってしまう流川に追いつく気にもなれなくて。

 
私はとぼとぼと歩いた。


 
振り返った流川が立ち止まって、私を少し待って。

 
隣りに私が追いつくと、歩調をあわせてくれた。



「あの…」


「なんだ」


「どうして、こんなに直ぐにここに来れたの?」


 
疑問をぶつけると。



「ああ…この先のファミレスにいたからな」


「ファミレス?」


「ああ」


「なんで?」


「お前が追い出したからだろ」


「え?」


「今日はそこに泊まろうと思ってな」


「行くとこ…ないの? っていうか、いっぱいあるんでしょ? ホントは」


「いっぱいなんてあるか、バカ。そもそも俺は、人に世話になるのが嫌いなんだ」