困惑する私の言葉をさえぎって、流川はさらに続けた。
「いいから言うとおりにしろ。真っ直ぐアパートに戻ったら、部屋、覚えられちまうぞ」
「あ…」
「わき道に入ったら全力で走れ。いいか、入ってからだぞ? その場所から走ったらすぐに追いつかれちまうからな。お前、足遅そうだし」
流川の声に笑いが滲む。
「ひどっ…」
ムッとしたけれど、その言葉にちょっと緊張がほぐれて。
「わかった。やってみる」
「電話は切るな」
「うん…」
私は電話の向こうの流川を感じながら、公園を目指した。
足音はまだついてくる。
すぐにでも走り出しそうになる足を必死で制して、できるだけ平静を装って前へ進む。
「流川…」
「ん?」
「もうすぐわき道」
「ああ。振り向くなよ。転ぶぞ」
「ころっ…うん…」
わざと笑わそうとしてるのか、それとも地なのか…たぶん、後者だけれど、流川の声が聞こえてるだけで、心強い。