「何してんだろ…私」


 
雨に濡れたアスファルトの上をそろそろと歩く。

 
外はやっぱり真っ暗で。

 
車も通らない。



「やっぱり怖いかもぉ…」


 
零時近い近所の細道は、ひっそりと静まり返っていて。

 
アパートを出て少しするとすぐに心細くなった。

 
 
でも何だか引き返せなくって。

 
さっき通ったコンビニまでの道をとりあえず歩いてみる。

 
 
当然、私には流川の行きそうな場所なんて検討もつかなくって。

 
ポケットから何度もメモ用紙を取り出して、電話をかけてみようとしたけれど。



「だ、ダメだ、それは」


 
アイツのことだから、絶対つけあがる。

 
それに。


仮に電話して。

 
おもいっきり楽しそうな騒音と声とか、

 
もしかしたら、女の人の変な声とか……聞こえてきたら。

 
…い、いやだっ。

 
こっちが赤面しちゃうしっ。



私はちゃんと「宿」が探せたかどうかが気になるだけで。

 
アイツが何をしていようと構わないのだっ。


 
もしも本当に野宿なんてして、風邪をひいて。

 
こじらせて、入院しました…

 
…なんてことになったら、追い出した私のせいみたいだもん。


 
それは困るっ。

 
要くんにも、迷惑かけちゃうし。



「とにかくっ。この周辺にいなきゃいいんだ」


 
暗闇と心細さに負けそうになる気持ちを奮い立たせて。

 
私は怖怖ながらも、コンビニまでの道を急いだ。