「…え?」



なんで?


誰の、靴?

 
しかも玄関、鍵かかってないし。

 
 
もしかして……泥棒?!

 
ま、まさか……変質者?!



「どどど、どうしよう…」


 
怖くなってカラダに緊張が走る。

 
で、でもっ。

 
泥棒なら、こんな無用心に灯りを点けて部屋の中を物色するはずがないよね?

 
 
変質者なら……って、やっぱり変質者?!

 
もしかして、中でじっと潜んでるとか?!

 

い…いやいやいや、いくら変質者だって、


「どうも変質者です。待ってました」

 
…みたいに、灯りをつけて待ってるはずがないし。

 
 
回る回る思考回路。


 
手足が小刻みに震えてしまって。

 
背中にひんやり汗が流れる。

 
 
や、やばい。

 
こういうとき、どうすればいいんだっけ?


 
逃げればいいんだっけ?

 
叫べばいいんだっけ?


 
ううう…混乱してきた。


 
一人じゃ…何にもできないよ…


 
どうしていいのかわからずに、

 
しばらくその場で固まっていた私。



――しばらくすると。


 
ガタッ…

 
ゴトゴトッ!!


 
「ひぃ…っ」


 
暗闇の向こうから物音が聞こえてきて。

 
たまらず喉につまる声。



「ば…バスルーム…?」


 
よくよく見れば、バスルームの明かりが点いている。

 
擦りガラスの向こうで、もぞもぞと動く、肌色の物体。



「やっぱり…要くん?」



泥棒も変質者も、物色しに入った部屋でのん気にお風呂になんて入るわけがないし。

 

「か、要くん…だよね?」



とりあえずこの場は、そう思い込むようにしてみるっ。



「要くーん…?」



おそるおそる声に出しながら、靴を脱ぎかけたとき。



カチャ…



バスルームの扉が、開いた。