どうやら二人組らしい。
向かい合って、なにやらお話中…というより取り込み中という感じ。
男の人と、女の人?
背の高い人と髪の長い人だから、たぶんそうで。
「もう、バカバカバカっ」
…なんて聞こえてくる。
あらら、ケンカでしょうか?
私は抱えていた洗濯物ごと部屋のなかに少し身を引いて、その様子をうかがった。
こういうの、イケナイ…と思っても、見ちゃうんだよね。
耳をすまして、こっそり下をのぞきこむ。
「アタシのとこに来ればいいじゃないの」
「まあでも、ここレンタルしちゃったし」
「アタシの部屋はいつでも空いてるのよ、ナオちゃんのために」
――ん?
レンタル?
ナオちゃん?
「空いてるって言われてもなぁ。まあ、今度な、今度」
「今度ってぇ。いっつもそう言って来てくれないじゃないのぉ、ナオちゃん」
「店には行ってるだろ? これでも結構忙しいんだよ」
――なんか…どこかで聞いた声…
「わかったわ。気が向いたらアタシの部屋にも着てちょうだいね」
「ああ、気が向いたら、な」
「今度はお店にいつ来るの?」
「わかんね。ま、近いうちに行くからさ」
「待ってるわよ」
もしかして……
隠していたカラダを乗り出して、ベランダの柵に手をかける。
じっと暗がりに目を凝らし、よくよく見てみれば。
「やっぱり…流川…」