「ちょっと麻紀、声、デカい」


「ごめんごめん。で、何? 泥棒? 変質者? あんた、格闘したの?」



おいおい。ちょっと麻紀さん? 

 
もしそうなら、今無事にここにいる私、強すぎやしませんか?



「まさか」


「でも変な男って」


「あのね、どう説明すればいいのか…」


 
私は昨日の夜から今朝までのことを一旦頭で整理して、麻紀に説明をした。

 
麻紀の顔は、驚いたり、渋くなったり、ちょっと歪んだりしている。

 
でも最後には、にんまりと微笑んで、



「へえ。おもしろそう」


「……」


 
私の周りの人間、あっけらかんとしてる人ばかりですか?

 
要くんにしても、麻紀にしても。



「とにかく困ってんの! 図々しいし、なんだか… エラそうだしっ」


「まあでも、彼氏が貸しちゃったんでしょ? 仕方ないじゃん」


「で、でもっ」


「だってさ唯衣、あんた、部屋のガス止められたとか言ってなかったっけ?」


「あ」


 
言われて気づいた。

 
そういえば…私の部屋、ガス、止まってる…

 
先月いろいろ無駄遣いが多すぎて。

 
仕送りもバイト代も底をついていたんだった…

 
部屋は要くんのところがあるし。

 
今月のバイト代が出たら、それで払えばいいや…とか思っていたんだった…



「忘れてた…」


「バカね、あんたも」


「麻紀~、麻紀んとこに泊めてくんない?」


「無理ね」


「なんで…」


「あたしのとこも、彼氏が入り浸ってるから」


「そ、そんな…」



鬼かっ!! 私の親友!!