唇を離せば、ぼんやりしてる、赤い顔。
俺をからうなんて、10年早ぇんだよ。
泣いてんのか、笑ってんのか…
わかんねーぞ、その顔。
まあ、それなりに可愛いけどな。
いつもの調子で、
ふふん、と笑ってみせれば。
ふふふふん。
なんだよ、お前。
同じ顔して笑いやがって。
いつ憶えた、その笑い。
ちきしょう。
どうしてやろうか、目の前のオンナ。
この先の、コイツとの関係。
レンタル…っていうのは、もう無いだろう。
どう転ぶのか、先のことはわからねぇが。
とりあえず今は、
目の前のコイツを。
少し成長してみせた、
コイツのことを。
大事にしたい。
床に転がったカエルを持ち上げて、
カエルごと飛びついてきたコイツのことを。
守りたい、なんて思っちまうあたり、
俺のほうがコイツに惚れてんのか。
「もう容赦しねぇからな」
「えへへへ」
わかんねーな、コイツ。
逃げんなら、今だぞ。
まあ、いい。
そんなことはどうでも。
この先のことも、
これから考えればいいだろ。
とりあえず。
自分でも笑っちまうんだが。
照れながら俺を見上げるその顔に、
俺は今、
―――満たされている。
- fin -