もしもコイツと出会わなければ。
ここでこんなことだってしてなかったんだろう、もちろん。
俺が部屋をレンタルしなければ。
そこにコイツがいなければ。
恋愛なんて、どこに転がってるかわかんねーな。
もしも今夜、
俺がまたお前を呼んだら。
またすんなり入って来るのか?
俺のところに。
もしも俺が、
その先のことをしようとしたら。
お前はどうすんだ?
旅館なんて予約して。
計算なのか、そうでないのか。
単純すぎるお前の発想は、俺だってよくわかんねーんだよ。
こんなところに連れてきて。
それなりの覚悟はでも、できてんだろ?
「流川」
まだ赤い顔のまま、腕のなかで、俺の名前を呼ぶ声に。
試しにカラダを引いてみる。
唇でピアスに触れて、
「なんだよ、」
反則か?
まあ、いい。
「……唯衣」
ぴくんっと上がる肩に。
思わず口元が緩んでしまう。
「ななな、名前っ、憶えてたんだ、私のっ」
当たり前だろ。
「いっつも、おいとか、お前とか、バカとかばっかりだったのに」
タイミングがつかめなかっただけだ、俺が。
「な、なん、か…」
ぎゅう、としがみついてきて。
「嬉しい、かも」
……お前のほうが、反則だ。