「ま、まだよくわかんないんだけどっ」


 カエルに顔を隠したまま、


「そのっ! あのっ!」


 ひたすら絶叫を繰り返し。


「…す…す…好、き」

「はあ? 聞こえねぇよ」

「すっ! …好き、かも…しれな…」

「……」


 なんだよ。

 「かもしれない」って。


「ああ?」

「や、やっぱりいいっ」

「ちゃんと言えって」

「いいっ。なんでもないっ」

「なんだよ、好き、かもしれないって」

「えっ?! き、聞こえてんじゃんっ」


 顔を上げたコイツの顔は、

 夕日のせいなのか何なのか、

 いつも以上に真っ赤に染まっている。


「好きかもしれない、って何なんだよ」

「う、ぎゃ、ぼ、だ、からっ」


 まともにしゃべれーねのか、お前は。

 またカエルで顔を隠しやがって。

 
 悪いが。

 ちょっと、どいとけ、カエル。


「あっ」


 抱えていたカエルを奪い取ると、


「ああああわわ…」


 バカみたいに焦ってやがる。


「お前な、告白するんなら、堂々と言え」

「こ、告白、っていうか」

「気持ち固まってねーんなら、言うな」

「う」


 中途半端な気持ちなんていらねーよ。

 
 取り上げられたカエルを眺めながら、こぶしを握り締めて立つ姿は、


 …ったく。

 ムカつくんだよ。


「ひゃ…」


 引き寄せて抱きしめてみても、

 まだ足りねぇ。