なんだか嬉しそうにニンマリしたコイツは。

 カエルを抱えて窓際へ移動した。


「流川っ! すごいよ、夕日」


 背中にオレンジを背負って、俺に手招きする。


「ほらっ。山にべっちょり溶けてる」

「…もっとイイ表現はねーのか、お前」


 隣りに立ち、眺めるデカい夕日。

 すっかり同じ色に染まった空が、一面に広がって。

 見おろすコイツの顔もカエルも、言葉を借りれば、べっちょり染まっている。


「キレイ」

「だな」


 不思議なものだ。

 ここでこうしてコイツと立っているということが、まるで当然のように思えてくる。

 
 たかが一ヶ月のレンタル関係で。

 それから二ヶ月足らずしか経っていないのに。


 コイツは口をつぐんで、じっと目の前の夕日を見つめている。

 真面目な顔して…なにを考えているんだか。


「あのさ、流川」


 なんだよ。

 またピアスじゃねーだろうな。


「私さ、る、る、流川のこと」

「ん?」

「その、す、す、すすす」

「なんだよ」


 相変わらずどもるな、コイツ。

 まあこれは、緊張のサインなんだが。


「カエル、つぶれてるぞ」

「うん。って、そうじゃなくてさ」


 夕日を見たり、うつむいたり。

 落ち着きなく視線をめぐらせて。


 なんだよ、そういうことか。


 ふん。

 何が言いたいのかなんて、もうわかったわ。


「なんだよ」


 わざと顔を覗き込んでやると、


「ぎゃ… ち、近いっ」


 カエルを盾に使いやがって。


「早く言え」

「ううう…」


 ホントおもしれーな、コイツ。