「最初はアンタみたいな人、大っきらいだったんだけど」


 ふん。

 俺の気苦労、ホントに何にもわかってねーな、お前。


「でもさ、迎えに来てくれたり、ピアスとかケーキとかプレゼントとかしてくれたでしょ?」


「流川がレンタルしたのは…もともと要くんの部屋だったのに」


「私も流川のことレンタルしたけど…流川に貸してたのは、結局、要くんの部屋なんだよね」


「その、なんだ…よく考えてみれば、流川は私から何にもレンタルしてなかったよね」



 ………。

 そうだな。

 言われてみれば。


「だから、お礼ってわけか」

「うん。それもあるんだけど、あと…」

「あと?」


 まだ何かあんのか?


「いろいろ流川にやらされてさ」

「……」

「イヤなこととか言われたりさ」

「……」


 だからそれは…


「だけど…」

「…だけど?」

「さっきの話。前に進めたってこと」

「うん?」

「自分でも気づかないうちに、しっかりしなきゃとか思えるようになってた。アンタのそういう態度で」

「……」


 湯飲みを持ち直したコイツは、


「だからっ。今日もね、全部私が自分で仕切って、運転も予約も全部自分でやって、あああ、アンタにゆっくりしてもらおうかと思ってさっ」


 ぐい、と口に運んだ。


「んげっほっっ!! ごほっ!!」


 …むせってやがる。