「疲れたぁ~~」


 通された部屋の畳の上で、大の字に寝転がるコイツ。


「なんかお腹へった。流川は? へってない?」


 寝転んだままデカイかばんに手を伸ばして取り出したのは、大量のお菓子類。


「お前…なんだそれ」

「なんだって、お菓子じゃん」

「そんなに持ってくることねーだろ」

「つい買いすぎちゃってさ」


 …遠足じゃねーんだぞ。


 テーブルに並べたのは、1、2、3…5袋分のスナック菓子やらチョコ菓子やらで。


「もうすぐ夕飯だろ。そんなに食ったら、メシ食えねーぞ」

「あ、そっか」


 カエルを抱えながら、それでもひとつの袋を開けたコイツは、

 お茶をすすってから、ぐんと伸びをした。


「二ヶ月ぶりだね、温泉」

「ああ」

「それにしても高かったなぁ。普通に予約すると。キャンセルしようかと思ったもん、金額聞いたとき」

「……」


 だろうな。

 よく奮発したもんだ。


「だから。なんで温泉なんだよ」

「う~ん」

「いきなり旅行なんてさ」

「うん」

「俺に襲われるためにでも予約したか」


 すっかりクセになっちまったからかいセリフが口をつく。

 案の定、目の前のコイツは真っ赤になり。


「ちっ、違うしっ」

「でもな、旅行に誘うってことは、そうだろ」

「それはっ! そのっ! なんだっ…」


 汚ねーな。

 スナック吐き出しながら騒ぐんじゃねーよ。


「る、流川に」

「俺に?」

「おおおお、お礼しようかと思って…」

「あ? お礼?」

「…うん」


 なんだよ、お礼って。

 何かしたか、俺。


「意味わかんね」

「そのそのその…なんだ」

「なんだよ」

「私が、前に進めるようになったから」

「前に?」

「うん」


 カエルの頭をアゴで突きながらコイツは、

 ぽつりぽつりと話し出した。