何だかんだと言いながら、

 俺の言いつきに、コイツも必死で食い下がってくる。

 それなりになついてもきやがって。

 いや、慣れたとでも言うのか。



 一番避けたいパターンだった。

 

 必ず終わりのくるこの関係。


 踏み込むことも、踏み込ませることも、避けたかったはずが。

 時間を共有することで、ちっちぇキズナみたいなものは、どうしても生まれてしまう。


 まあそれも、ただの馴れ合いだと思っておいたほうがいいだろう。

 
 レンタルした部屋を見渡すと、そこかしこに溢れるコイツの持ち物。

 
 考えなくともわかる。
 
 コイツは要にベタ惚れだ。
 

 お互いに慣れてきたとは言え、

 目の前に散らばる事実に囲まれて生活していることには変わりはなく。

 
 そんな現実が目の前にある以上、下手に手を出すこともできずに。

 時々、衝動的に込み上げてくる男としての自分の欲求を押さえ付けることは、想像以上に困難なものだった。


 それが何なのか。

 だたの、本能、か。

 
 気になる存在だっただけのコイツ。

 言葉の節々に感情が滲み出るようになっちまった自分のセリフをいちいち確かめて。


 計算で動かないオンナっていうのは、なかなか扱いに苦労するもんだ。

 振り回され始めたのは、実は俺のほうだったりするのかもしれない。


 毎朝腹を出しながら眠っているコイツの寝顔をマジマジと眺めながら、

 駅からアパートまでの距離を並んで歩きながら、

 残りわずかになったレンタル関係の行方を思っていた。