「変なの」

「あ?」

「アンタみたいな人、嫌いなはずだったのに」

「なんだそれ」


 流川は少し前で苦笑して。

 ジーンズのポケットに手を入れた。


 

 流川と私の関係。

 ヘンテコなレンタル関係。


 そんなところから始まったけれど。


 ありえないこととか。

 偶然みたいなこととか。

 ラッキーだと思ってることとか。


 もしかしたらそれは、

 常にそばで起きてることで。


 偶然と感じるか、奇跡と感じるか。

 当たり前のことだと思うのか、めぐり合わせだと思うのかは。


 自分次第、だと思う。



 今、ここを歩いている人たちも。

 私よりもっと、すごい体験をしてるかもしれないわけで。

 そのすごい体験を、私が聞いて、びっくりしたとしても。

 当の本人にとっては、なんでもないことだったり。


 恋の悩みなんかも。

 私が聞く限り、どうでもいいことだったり。

 麻紀と祐二くんのケンカの原因みたいに(笑)

 
 私が要くんと流川のあいだで揺れてたりするのも、

 聞かせたあとで、「なにそれ」なんて切り捨てられるのかもしれない。

 悩みも、人それぞれなんだ。


 よくよく考えれば、贅沢な悩みだったりするのかも。

 恋の悩みを抱えられるだけ、幸せなのかも。

 

 恋って不思議。

 絶対ない、と思っていたことが起こっちゃったり。

 抑えようと思ってるのに、抑えきれなかったり。

 ゆっくり落ちることもあれば、突然落ちてしまったり。

 気づいてみれば、好きだったり。

 もう絶対恋なんてしない、誓ったはずなのに、しちゃったり。


 結局。

 恋って止められないんだよね。

 だからどうしようもない。

 だからどうにかするしかない。


 自分で。