「…来たくないの?」


 上目遣いで。


「来ないにしても…今日一日くらい…一緒にいてくれても…いいじゃん」


 込み上げてしまう感情をぶつければ。


「今日はダメだ」


 ぼそり。


「なんで?」

「お前さ、」

「なに?」

「寂しいだけなんだよ、まだ」

「…え?」

「ひとりになることに、少し慣れろ」

「……」


 寂しいだけ?


「もう少しよく考えろ、いろいろ」

「いろいろ…」

「自分のことなんだから」

「……」

「俺は甘やかさねーからな」


 それだけ言うと。

 流川は、私の手を引いて、また歩きだした。



「あわわ…」


 スタスタ行ってしまいそうになる流川の背中を追いながら。

 必死でサンダルの足を前に運ぶ。


 もしかしたらこれが。

 流川流の優しさなのかな、なんて。

 一歩踏み出すごとに、思えてくる。


 私は。


 誰かを…要くんを好きになってから。

 少しでも一緒にいたくって。

 離れてるのが不安で。

 誰にも渡したくないし、とられたくないし。

 常にそばにいなきゃ、関係がすぐに壊れてしまうと思ってて。


 寂しいとき。

 悲しいとき。

 そばに誰かがいてくれなきゃ怖くって。

 一緒にいれば、気分が紛れるし。

 優しくしてもらえれば、すぐに忘れられるし。

 それが、幸せなんだと思っていた。

 
 べたべた、じゃないにしても。

 くっついてれば、大丈夫なんだって、思ってた。

 自分が満たされてれば、それでいいんだって。


 もしかしたら要くんも、少し、窮屈だったのかもしれない。

 優しいから、言えなかっただけで。

 怒らずに。

 文句も言わず。

 流川とは、大違い。


 そういえば…

 ケンカだってしたことなかったな。

 きっと。

 いっぱい我慢させたはず。


 負担をかけていたかもしれないんだ。

 思い返すと、しゅん…となる。